シャンプーで洗った髪からは真っ黒い湯が流れた。H君はバスタブに湯を溜めたらしい。「もうお湯がネズミ色ですよ」バスタオルで髪を拭きながらそういった。彼の顔も風呂に入る前に比べると、心なしか白くなった気がする。たぶんそれは僕もカメラマンも同じだった。そこまでは僕も覚えていた。しかしその後の記憶がない。覚えているのは、妙に頭が熱いということだけだった。僕はベッドに横になると、あっという間に寝入ってしまったらしい。
[参考]
ホテル東日本盛岡 - じゃらんnet
http://www.jalan.net/yad345349/
コンフォートホテル呉 - じゃらんnet
http://www.jalan.net/yad330900/
御茶ノ水駅のホテル - じゃらんnet
http://www.jalan.net/hotel/130000/STA_990065/
翌朝、その後のことをカメラマンがこう話すのだった。「あの後、ビールでも飲んで一気に寝ちゃおうってH君がいうんです。それもいいかなって頷き、H君が部屋の電話をとって、俺に訊くんですよ。『どうしていま、俺は受話器をもってるんだろう』って。椅子で話していて、三歩ほど歩く間に忘れちゃったんです。僕らやばかったですよ」僕も同じことを考えていた。その夜、僕は生まれてこのかた、見たこともなかったほどたくさんの夢を見た。次から次へと夢が湧き出てくるような感じだった。どこか自分か怖くなった。これはどこかでちゃんと休まなくちゃいけない。そうでもしないと脳が壊れてしまう。まじめにそう考えていたのだ。しかしいったいいつ、ゆっくり休めるのかとも思う。どこかでのんびりしてしまったら、もう腰があがらず、バスに乗る気力が湧いてこないような不安が頭をもたげてくる。一気に範が緩んだような気がした。