私の祖母は、「若いうちの苦労は買ってでもやれ」とよく言っていた。苦労を乗り越えての成功は、精神を強くする。娘の場合は今まで順調に行き過ぎだった。むしろその方が将来危ないと思っていた。大学の浪人など、果たして苦労といえるほどの苦労なのかどうか。まして家族がそばにいて、しかも予備校に通いながらなのだから。だが東大の場合は、周囲の高い評価があるだけに、自分の中でのプレッシャーは相当なものであるはずだ。ここまでくれば、もう親は何も言うことはない。黙って本人の決断を認めるだけだ。そう思っていた。ありがたかったのは、そうしたことを相談できる友達がいてくれたことだ。この時期になると、影響力は親より友達の方が大きがったりする。私はバタバタしていて、それこそ娘がいつ出て行って、いつ帰って来たかもよくわからないまま、普通の生活にもどっていった。それからだろうか。娘の表情は明るくなっていった。